閉包演算の単調性
位相空間において、閉包演算の単調性とは次の性質を指す。任意の二つの集合 \( A \) と \( B \)(いずれも閉集合である必要はない)について、もし \( A \subseteq B \) であれば、その閉包も同じ包含関係を保ち、\( A \) の閉包は \( B \) の閉包に含まれる。すなわち、次が成り立つ。 \[ A \subseteq B \implies \text{Cl}(A) \subseteq \text{Cl}(B) \]
これは位相論における基本的な性質の一つであり、定義を知らなくても直感的に理解しやすい事実である。
イメージとしては、次のように考えるとよい。小さな箱を閉じ、それをさらに大きな箱の中に入れてから大きな箱を閉じる。このとき、小さな箱が大きな箱の外に出ることはない。同様に、集合の包含関係は閉包を取っても崩れない。
具体的な例
標準的な位相を備えた実数直線 \(\mathbb{R}\) を考えよう。
この位相では、開集合は開区間として与えられる。
\(\mathbb{R}\) の部分集合として、次の二つを取る。
\[ A = (0, 1) \]
\[ B = [0, 2] \]
明らかに、区間 \( (0,1) \) のすべての点は区間 \([0,2]\) に含まれているため、
\[ A \subseteq B \]
が成り立つ。
集合 \(A\) の閉包
集合 \( A \) は開区間 \( (0,1) \) である。
閉包とは、集合にそのすべての極限点を加えたものである。この場合、\( A \) の極限点は \( 0 \) と \( 1 \) である。実際、\( 0 \) や \( 1 \) のどんな近傍にも \( A \) の点が含まれる。
したがって、
\[ \text{Cl}(A) = [0, 1] \]
となる。
集合 \(B\) の閉包
一方、集合 \( B \) は閉区間 \([0,2]\) である。
この集合はすでに閉集合であり、すべての極限点を含んでいるため、閉包を取っても変化しない。
\[ \text{Cl}(B) = [0, 2] \]
結果の確認
ここまでで、
\[ \text{Cl}(A) = [0,1], \quad \text{Cl}(B) = [0,2] \]
であることが分かった。
区間 \([0,1]\) は \([0,2]\) に含まれているので、
\[ \text{Cl}(A) \subseteq \text{Cl}(B) \]
が確かに成り立つ。これが、閉包演算の単調性を具体的に示す例である。
証明の考え方
一般の場合についても、考え方はシンプルである。まず、
\[ A \subseteq B \]
を仮定する。
点 \( x \) が \( \text{Cl}(A) \) に属するとは、\( x \) の任意の近傍が \( A \) の点を少なくとも一つ含むことを意味する。
\( A \subseteq B \) であるため、近傍が \( A \) の点を含むなら、それは同時に \( B \) の点も含む。したがって、その点 \( x \) は \( \text{Cl}(B) \) にも属する。
別の見方をすれば、集合 \( X \) の閉包は「\( X \) を含むすべての閉集合の共通部分」として定義される。\( A \subseteq B \) であれば、\( B \) を含む閉集合は必ず \( A \) も含むため、その共通部分についても包含関係が保たれる。
以上より、
\[ \text{Cl}(A) \subseteq \text{Cl}(B) \]
が導かれる。
このように、閉包演算の単調性は定義から自然に従う、位相論の基本的かつ重要な性質である。
以下同様。